美味しいトマトを作るのはどんな人?

ときどきお客さまから「どんな人たちが作っているのかなと思いました」というお言葉をいただくので、自分たちのことについて書いてみます。ものすごく長いお話なので目次をご用意しました

  1. 長いのはイヤなので 3行でまとめてちょうだいっ! という方は Click! → 
  2. わたしたちのこと
  3. 農家になってみて
  4. トマトたちのこと
  5. 環境というかトマトをめぐる世界観
  6. メディア掲載情報
  7. アテネファーム直売所

わたしたちのこと

二人とも生まれも育ちも東京です。北海道に来る前はサラリーマンの共働きをしていました。とうちゃん(ごうのすけ)が「農業をやろう!」と言った時にはとても驚いたけれど、二つ返事でついてきてしまいました。 (^^) 2002年に北海道に初上陸。農家になるのにどこがいいのかな…と迷うこと数年。2005年、道内あちこち住んでみた中で一番気に入った下川町に根を下ろすことに決めました。

ここが気に入った理由?

冬にうーんと寒くなる(マイナス30度)ので病害虫が少なくて、努力と工夫によって農薬をほとんど使わなくても栽培が可能なところ。そんなに冬は寒いのに、夏には日照量もたくさんあってちゃんと暑くて(プラス30度)十分産業として農業ができる。ここは夏の夜はひんやり涼しくなるので、その寒暖差で野菜は甘く美味しくできるの。

それから住んでいる人たちがオープンマインドで、なんとも居心地がいいんですね〜。移住者の変な先輩たちもたくさんいるので、うちがちょっとくらい 変な人 でも目立たないかな、と思いました。自然が厳しい分、人の心があったかい感じがします。

厳寒の朝、空気中の水分までもが凍りついてキラキラして見えたり(ダイヤモンドダスト)、夏の夜空には星がいっぱいで天気の良い日には家の裏でも普通に天の川が見えたりします。(それだけ人家の灯りが少ないということでもあるのですけれど 笑)家からハウスへの行き帰りに毎日空を見ているのですが、毎日毎日一日として同じ空はなく飽きません。

農家になってみて

今まで親戚にも農家の人はいなかったので知らなかったのですが、農家ってやってみたらけっこうたいへーん!(普通は就農前によく考えますよね  (^^;)

一年の半分くらいが雪の下に埋もれてしまう当地では農作業シーズンはとても短いので、シーズンが始まったらほとんどノンストップで爆走です。サボったりすることはもちろんないのですけれども、ちょっと何かトラブルや手違いでもあって「遅れ」が出始めたら、大変!その「遅れ」が作業を増やして、雪だるま式に「遅れ」が増大していきます。季節も野菜も「待った」は聞いてくれません。

そして、こちらのほうがキツイのですがときどき大雨などの災害にも見舞われます。自然災害で農作物が出荷できなくなっても誰も保証してくれません、つまり収入なし。(農業共済という仕組みもありますが、ハウス野菜の場合ほとんど共済金はでないものと思ってたほうがいいくらいです)収入がなくても、そこまで投入した費用(苗代、肥料代、資材代、燃料費等)も、農業開業にかかった費用の返済も、生活費もなけなしの貯金から払わないとなりません。

2〜3日連続で降った大雨で、春からの努力がすべて水の泡というのは本当に泣けます。これは金銭面よりもずっとずっと気持ちがめげます。わたしたちだけでなく、トマトたちも少ない水で厳しく育てられたのに、なんの実りももたらせず無念に思っているような気がします。

そんなにたいへんなのになんで農業をやるのかな?とときどき考えます

それはやっぱりみんなの美味しい笑顔をみたいから…なんていうとかっこよすぎるかな、へへへ (^^)

美味しいものを食べるときって、みんな本当にいい笑顔をしています。偉い人も普通の人も、おじいちゃんもちびっこも、気取ってる人も仲良しさんも、みんな 「うわっ!おっいしぃ〜!」 のときには とびきりの笑顔 を見せてくれます。これが見たくてやってるといっても過言でないくらい、天にも昇る気持ちになります。そして心の中でこっそり「そうでしょう?がんばってきてよかったな♪」って思っているのは ヒ・ミ・ツ♪

たぶん 食べること というのは、人類がまだ生まれる前(の猿人か何か?もっと前かな?)からとても うれしいこと で、 幸せな気持ちになれること だったんだろうなと思うのです。

なんていうのか、こういう言い方すると大げさだけど本能に根ざした喜びみたいなもの。農耕は古来から行われてきた人類の壮大な営み…。何万年も前から人々は大地を耕し、空を見上げて、おひさまに祈り、実りに感謝してきたんだろうね、なんて朝焼けをみながらふたりで話したりしてます。

トマトたちのこと

わたしたち夫婦には子どもがいません。トマトたちが子どもみたいなものかな。他の人が呆れるくらい、2人で一日中トマトの話をしています。技術的な考察のこともあるし、観察の報告のこともあるし、新しい取組のアイデアのこともあるし、よくまあこんなにトマトの話ばかりすることがあるなぁと思うくらい共通の興味の対象になっています。

早春の、まだ外気がマイナス20度くらいで外も雪深いときに苗が来るのですが、それから暖房の心配のなくなる5月中旬くらいまで、苗が心配なので毎晩2人で交代で深夜の温度チェックに起きます。暖房機はいつ何が起こるか(故障したり、燃料のトラブルが起きたり)わかりません。ぐっすり眠っている間に火が止まってしまったら、トマトたちは全員凍死です。「新生児の授乳みたいだね」とときどき言われるのですが、けっこう緊張感があるのか3〜4時間すると自然に目が覚めるんですよ。(そしてまた短い眠りにつきます)

それからひと冬に1〜2回くらい、一晩で40cmも積もるような大雪のときがあるので、そういうときには吹雪の中でも深夜でも関係なく除雪に出動です(主にごうのすけさんで、わたしは布団の中でお留守番… (^^;) 吹き付ける吹雪の中、暗闇を何時間もかかって除雪して、身体の芯から冷えてひげとまゆげからツララを垂らして帰ってくるごうのすけさんはちょっとかわいそうです。でもそれをしないと、ビニールハウスなんて一晩の大雪で簡単につぶれてしまうのです。かわいい我が子のためにがんばれ、とうちゃん!


一般的には、トマトは5~40℃までガマンできるようですがタキイさんのサイトより)、育つのに気持ちのいい温度帯というのはもっと狭くて「昼気温25~30℃、夜気温10~15℃」だそうです。でも、わたしたちはもうちょっといろいろ考えていて、トマトたちの気分によって気持ちのいい温度って違うのではないかと思うのです。ここから先は企業秘密(!?)なので詳しく書きませんが、あんな条件のときにはこんな風に、こんな条件のときにはこういう風にといろいろ工夫をしています。そういうことを考えながら窓をあけたりしめたり(それもどこの窓をどういうふうに開けるかとか…)かなりマニアックな管理をしています。

どういうのがトマトたちにとってベストなのか、そればかり10年以上ずーっと考えながら栽培を続けているうちに、だんだんトマトたちの気持ちがわかるようになってきたのか「ああ、今はこういう風にして欲しいんだな」と、トマトたちの声が聞こえるような気がしています。そして望むようにしてあげると、こちらの思ったような結果があらわれてきて…。

今はそんな感じでトマトたちと心を合わせて二人三脚で歩んでいます。

ずっとトマトたちと向き合ってきて思うのですが、ヒトがトマトにしてあげられることってすごく限られているのです。肥料や水を上げることはできるけど、そもそもそれをしっかり吸える健康な根がなければ話になりません。日照を用意してあげることも、トマトたちのかわりに光合成してデンプンを作ってあげることもできません。花芽を増やしてあげることもできないし、落ちそうな花をテープで修理してくっつけてあげることもできません。

いつもがんばるのはトマトさんたちなんですね。

どうしたらトマトたちが気持よく働けるのか、ヒトはトマトたちの声を聞きながら環境を整えてあげて、あとは待つことくらいしかできないのです。

環境というかトマトをめぐる世界観

トマトたちの気持ちのよい環境ってどういうのかな?って考えていくうちに、本当のところあまり人為的に介入し過ぎないほうがいいのではないかというところにたどりつきました。

たとえば、農家になると「ハウスの周りに雑草を生やしていると病害虫の発生源になるので除草剤を撒いてきれいにしましょう」と指導されますが、本当にそれがいいのでしょうか。ハウスの周りに草が生えていると(もちろん刈り込んであれば、ですよ)空気がひんやり涼しくなります。気温だけでなく夏の強い日差しの照り返しも和らげてくれます。それはトマトたちにとって気持ちの良いことのようです。

アテネファームの畑はもともとは牧草地だったところをトラクターで耕起して作ったところなので、わたしたちが来た最初の年は、イネ科の牧草とアカザとダイオウくらいしか生えていませんでした。でも今はものすごくたくさんの種類の草や樹が生えています。いろんな草が生えるということは、それぞれの種類が好きな生き物がいるということで、それは多種多様な野生動物やいろんな虫や菌たちの住処(すみか)になっているということです。

たとえば自然界には「人間にとって困る虫たち」の天敵も住んでいます。たとえばアブラムシの天敵アブラバチ類。とーっても小さな羽虫なのですが、アブラムシの幼虫に卵を産み付けて、幼虫は子どもの時にはアブラムシの身体の中身を食べて育って蛹になって、殻を破ってでていきます。右の写真はその殻(元はアブラムシ)の抜け殻。(クリックすると大きな画像で見られます)殺虫剤をまいて天敵まで殺してしまうのはもったいないですね。

それだけでなく、いろんな種類の虫や菌がいるということは、一種類がのさばらないということでもあります。

世の中には、人間にとって都合のいい虫(たとえばトマトの受粉を助けてくれるマルハナバチとか)と都合の悪い虫(トマトの葉っぱをチュウチュウするアブラムシとかトマトそのものを食べるタバコガの幼虫--青虫--とか)しかいないんじゃないんです。もちろん菌ちゃんたちも同じで、自然界に存在する菌はトマトの病原菌だけじゃないんです。

95%か、(あるいはもっと99.997%くらいかも?---数字にまったく根拠はありませんが (^^; ) それくらいの大多数の虫や菌たちは、人間がトマトを栽培する上でいてもいなくてもどっちでもいい虫や菌なんですね。でもそのいてもいなくてもどっちでもいい虫や菌たちがいることによって、トマトに悪さをする虫や菌ものさばりすぎることがないんです。

ハウスに殺虫剤や殺菌剤を撒いて皆殺ししてしまうから、バランスがこわれてしまって、一部の困った虫や菌が元気になっちゃうんじゃないのかな。あるいは今はまだ効果が証明されていないけど、どうでもいいと思っている虫や菌の中にはトマトの役にたっている子たちもいるかもしれないし。それ以前にトマトたち自身が健康で調子が良かったら、ヒトでいうところの免疫力のような自己防衛機能がちゃんと働くのです。健康な野菜は虫や病気に負けません。

でもここで勘違いしてほしくないのですが、「人が手をだし過ぎない」 というのと 「野放図」 というのは正反対くらいの違いがあります。手を出さない代わりに、ものすごくよくトマトとそのまわりの環境を観察していて、いろんなことにすぐ反応できる準備をしておいて、その上でトマトたちの自由にさせる…そんな理想の上司のような感じでしょうか? 「何か起きる」 前に、その予兆の、ほんのちらっとしたところでちょっとだけ軌道修正するんです。

うまく説明できないけれど、天候についても同じようにそなえるのです。農家はつい、晴れの日ばかりを望むけれどもそんな都合の良い話はありません。だから晴れの日も曇りの日も両方受け止めて、それぞれの天候によろしいように過ごすのです。

 

いろんな草や虫や菌たちがいて、その中にわたしたちも一緒にいるんですね。そして晴れの日も曇りの日も雨の日もある。それぞれが調和していることが大切なんだと思うようになりました。これは農業をはじめてとても実感しています。

そんなこんなを考えながらトマトの栽培をしていると、あまりにアタリマエのことかもしれませんが ヒトも自然の一部なんだなぁ と思うのです。そういう中で、トマトたちの声を聞きながら歩調を合わせて(早く赤くなるように急かしたりすることも、いっぱいとろうと無理することもなく)リズムをそろえて共に歩んでいくととても健全にトマトたちが育ってくれて、そして健全に育ったトマトは無理がなくて、バランスがとてもよくて、なんていうのか、パーフェクトなトマトになる感じです♪そしてそれを召し上がった人たちが笑顔になって、その笑顔をみてわたしたちもとっても幸せ♪

周りの環境も、虫も菌も、トマトも、お客さまもわたしたちも、みんなHappy で、めでたし、めでたしの大団円です。

「すべて調和して大団円」というのは、なんだか禅の一円相みたいですね。


右の画像をクリックすると、カリフォルニア大学植物生態学者、リチャード・カルバン博士の「植物同士が会話することはできるのでしょうか?」という動画が見られます。歯車マークを押すと字幕メニューがでてくるので、日本語を選ぶと日本語字幕がでてきますよ。植物にとって気持ち良いってどういうことかな、とか植物同士もコミュニケーションをとるのかな、とか面白いので良かったら観てね。

 

メディア掲載情報

アテネファームを取材してくださったメディアをご紹介します。
2017.8.10 下川町移住情報サイト タノシモ
楽しく移住している例としてのせていただきました。町内のカメラマン数井さんが撮ってくれた写真がとてもきれいです。お話は黒井さんがまとめてくれました。移住者インタビュー vol.7 中田夫妻 
2017.7.12 今野華都子さんのラジオ出演
思いがけないご縁で、今野華都子さんのラジオ『今日もくもりのち晴れ』に出演させていただきました。
2017.4.1 多国籍留学生が下川町の魅力を取材

下川町に来てくださる外国の方々に地方ならではの魅力を発信しようと、作られたパンフレットに載せていただきました。タイ語、中国語、英語バージョンがあります。

中でも中国語バージョンに注目!取材に来てくれたイハクさんがわたしたちのことをとても気に入ってくれて、チラシの中で「桃源郷のようだ」と書いてくれているようです(中国語が読めないのでよくわかりませんけれど… (^^; )

http://www.shimokawa-time.net/inbound-summer2017/ 
『ニューカントリー2017.4月号』
 新規就農優良農業経営者表彰の最優秀賞に選ばれたのをきっかけに「経営者のネクストステージ」コーナーにとりあげていただきました。
2016.11.29 名寄新聞
新規就農優良農業経営者表彰の最優秀賞の記事を載せていただきました。一面にでかでかと載ったので地域ではちょっとした有名人になりました。
2016.3.7 名寄新聞
濃縮フルーツトマトを紹介していただきました。
2011.11 雑誌『家の光』
フルーツトマト特集に載せていただきました

 

アテネファーム直売所

夏の間、だいたい7月から9月いっぱいくらいまで、農場の直売所でもフルーツトマトの販売をしています。午前中はビニールハウスで収穫をしていて、午後に納屋で出荷の準備をしていると思います。もし納屋にいなかったら、納屋の前に携帯電話番号を書いてあるのでちょっと呼んでみてくださいね〜♪

〒098-1216 北海道下川町上名寄1403

  • 東京からきたこだわりの変わりモン夫婦が
  • 厳しい厳しい環境を逆手にとって甘くて美味しいトマトを健全に作って
  • トマトも Happy 、あなたも Happy 、わたしも Happy 、めでたし、めでたし (^^)

3行でまとめると、ようするに…