トマト農家は何をみているのでしょうか

トマト農家は何をみているか

夏前に美容院にいったときにちょっとトマトの話をふられたので、 わたしとしてはごく控えめに さらっとお話したつもりだったのに、次に行った時に美容師さんから、「いやー、中田さんのトマトの話は衝撃的だったので、夏の間中、来るお客さんにトマトの話ばっかりしちゃいましたよ!」と言われてしまいました。

「えっ?そんな特殊な話はしなかったと思うけどなぁ」と言ったら、「だって中田さん "サイボウブンレツ" なんていうんですよ?ふつう細胞分裂といえばイキモノじゃないですかー」(あの〜、トマトもイキモノなんですけど…アサコ・心の声)


消費者の方はトマトといえば赤い果実を想像すると思いますが、わたしたちはトマトといえばあの草姿を想像します。わたしたちの頭の中では、果実はごく一部で、茎とか葉っぱとかそういう姿全体が「トマト」。そして果実を思い浮かべるときもだいたいは緑…。赤い実はあまり想像しないかも。

そして茎とか葉っぱとかの姿を見つつ、心の中で一生懸命見ようとしているのは地面の下の根っこのことです。ウエ(地上部)はシタ(地下)を知るための手がかりでしかありません。シタの結果がウエに現れているんですね。シタを上手につくることが何より大切。

それからわたしたちがハウスで「今、目の前の」トマトを眺めながら考えているのは、「過去」と「未来」です。

今、目の前に現れているのは2〜4ヶ月くらい前の細胞分裂中におきた「何か」の結果です。もし右の写真のようにトマトのお尻がきゅっと締まっていなくて穴が空いていたら、それはトマトの実ができる前の、花の異常。そしてその花の異常というのは、花芽を作る細胞分裂のときの「何か(たぶん寒さ)」の結果なのです。(余談ですが、わたしたちの栽培している品種は寒さに敏感で、ちょっとの寒さでこうやって穴があいてしまいます。こういう穴のあいたトマトは市場の値段が下がってしまうので「作りにくい」と敬遠されがち…美味しい品種なのにとても残念!)

そして今やっている管理はすなわち2ヶ月後の草姿で、4ヶ月後の実り。

顕微鏡の目で成長点の細胞分裂を観察している気持ちで、トマトたちのお世話をしています。 (^^)