アテネファームのトマトについて、シェフに伺ってみましたよ

イタリアンレストラン Sagra -さぐら-


さぐら 村井啓人シェフ

そのまま食べておいしい素材だからこそ 素材に負けない料理を考える

どんな人が、どんな場所で、どんな風に育てているのか。 その食材の生まれた背景を知りたいから、 そこまで出かけ、自分の目と舌で確認する…。

生産者の方を訪ね、顔を見て話をし、 しっかりとした物づくりやその想いもいっしょに調理し、 お客様においしく味わっていただく。

「生産者さんとお客様の橋渡し的存在でありたいですね。  ほんとにおいしい素材だからこそ、素材に負けたくないです」

そうおっしゃる村井啓人シェフが、 アテネファームのトマトを気に入ってくれました。


香りがなくなるのでトマトは洗わずに使います

いきなりへたを取り始めた村井シェフ。調理の前に洗ったりしないんですか…。

「トマトは洗わないで使っています。香りがなくなるんです。冷たく冷やしても味がぼける。室温でいいです」そうか、ふむふむ。トマトの香りを嗅いで思わずこぼれた笑みはこれだったのかな。

そういえば、アテネファームの納屋にいらっしゃるお客さまも、畑から収穫したトマトたちをそのまま口へと運んでいます。もちろん農薬とかはほとんど使っていないので、土とかゴミを払ったりするだけで大丈夫。納屋に置いてある「ご自由に…の小トマトちゃん」からもいい香りがしています。作業中には気づかないけれど納屋の中は「おいしい香り」いっぱいなんですね。みなさんもお届け箱を開けた時の「あい」や「こい」の香りを楽しんでみてください。

酸味や甘みの微妙なバランス 口の中に広がる複雑さが冷やすとぼけます

そうお話をしながらつくってくださったのが「ぬるいトマト」。

お話のように「冷やさない」で、セミドライのトマトを和えて、素材の香りや味わいをしっかり生かしながらのシンプルなひと皿です。ちょっとちがうとお叱りを受けるかもしれませんが「わけぎのぬた」や「ほうれん草の白和え」を感じる一品でした。

村井シェフの料理には、「短角牛の昆布〆」とか「盛り合わせの食材」など「和」の趣きのようなものが漂います。常連のお客様はよくご存じのことですが、ご実家が札幌すすきのにある老舗料亭「浪花亭」。そういう「育ち」が「和」を感じさせるんでしょうか。そう感じるのは約一名だけ? 

友人に紹介する際に、単に「創作系イタリアン」と言い切ってしまえないところが「さぐら」さんにはあるような気がします。

みなさんだったらどう思われるでしょうか。ぜひ一度味わっていただきたいお味です。きっとワインがすすみます。日本酒(SAKE)もあいそうです。

パスタは太い麺にしました 細い麺だとソースに負けてしまいます

アテネファームのトマトを使った「スパゲッティアラギタラ」。断面が正方形のようになっていて「うどんかな」というくらい太くしっかりとした麺です。ギタラ(ギタラ/キターラ【Chitarra】という名前はギターからきています。ギターのような道具に押しつけてカットするんだそうです)はトマトソースに負けない存在感で、すごく食感が良くておいしいです。トマトは「そのままの味」とも「ぬるいトマト」ともちがって、いろんなエキスがまざりあった感じかな。「糖度と酸味のバランス」の微妙さのようなものが口の中に広がります。

「さぐら」さんでは、アテネファームだけじゃなくて道内のいろんな生産者の方のトマト、いろんな種類のトマトを使っていらっしゃいます。それぞれにのトマトについて「これは口の中に残る香りがちがう」とか「ソースにしたときの食感が…」などなどしっかりと説明してくれます。トマトだけじゃなく、お店で使うひとつひとつの食材についてとっても詳しいのは、じっくりと生産者の方とお話をしているからでしょうね。それぞれの物語をしっかりと頭の中で想い描きながら調理されているんだなと感じます。アテネファームに来られたことも「とっても勉強になりました」といっていただきました。何を話したかな、少し照れますネ。

おいしすぎるんですね やっぱり「そのまま食べるのがいちばん」です

アテネファームのトマトは「そのまま食べる」「生のままを食べてほしい」ことを基本に育てています。でも、村井シェフの手にかかるとさまざまな料理になります。

買っていただいたご家庭で「よりおいしく食べる方法」はないですか? とお聞きしたところ、上のお答えがかえってきました。

「少しの塩がいいですね。あとオリーブオイル」「お醤油も面白いですね」とは村井シェフからのアドバイスです。もちろん極端に冷やしたり、ごしごし洗ったりなどなさらないようにして一度お試しあれ。熟成度によっても微妙な変化が味わえますよ

食べ物も器も「土」が大事だと思います

「ぬるいトマト」が盛られていた素朴な器、いいですねとお聞きすると「北海道の陶芸家」さんの作品だそうです。陶芸に使っている土も北海道内のものだそうです。

「すべては土からです。食べ物も器も土が大事です」

北海道の大地で大切に育てられた食材を、北海道の土の上に盛る。まさに北海道をまるごと、土ごといただきますって感じです。トマトの生育も土が大事です。もちろん水も、そして作り手の心も…。いっしょうけんめいつくったものを、いっしょうけんめい考えて調理して、いっしょうけんめいおいしく食べてほしい。土からも、山や海からもたくさんの食材が産まれる北海道。そんな恵みをしっかりと後世に伝えていかないといけませんね。器を見ているとそんな想いにかられます。

郷土料理になりたいです

「郷土料理になりたい」潔くそうきっぱりと言い切る村井シェフの姿勢は清々しいです。イタリアンという枠ではおさまりきらない「さぐら」の料理が、今後どんな風に郷土と語りあっていくのかとっても楽しみ。何度も通って変化を確かめたいお店ですネ。

地元札幌の情報誌やグルメ雑誌にとどまらず、料理専門誌などでも紹介されている「sagra(さぐら)」さん。

「あい」と「こい」の季節じゃなくても、お店の名前(さぐら sagra=イタリア語で収穫祭)どおりの北海道内のおいしい素材と村井シェフの料理、スタッフといっしょにしっかりとお店を支える奥さま、弥生さんのきらきら光る笑顔が迎えてくれます。札幌にお越しの際はぜひ一度足を運んでみてください。


このページの、村井さんの真剣な眼差しが伝わるお写真は 本田写真事務所  の本田 匡さんに撮っていただきました。うちのホームページの写真の大部分も本田さん  が撮ってくださってるんですよ?


イタリアンレストラン Sagra -さぐら- 取材の時は 札幌市中央区大通西8丁目 だったのですが移転しました

新しいお店は…

余市SAGRA   www.sagra.jp/   

北海道余市郡余市町登町987番地2 (登町小学校の斜め向かい) Tel:0135-22-2800